With a Small Camera - Bogota
2022
コロンビア共和国の首都ボゴタ。私はそこに住む友人からの誘いで、展示のためにアメリカを訪れたついでに2週間の予定でそこに寄ることにしました。
コロンビアについての知識はコーヒーの産地というくらいでしたが、友人はまず歴史博物館へ案内してくれました。かつてスペインの植民地であったこと、金やエメラルドの産地であること、そして恐ろしいほど治安が悪かったことを知りました。
「外ではカメラを持って出てはいけない」「夜に出歩いてはいけない」「襲われたら抵抗してはいけない」などと、いけないことづくしを説いてくれました。

そういう訳で、カメラはスナップ用の小さなカメラだけを使うことにして、それを撮影の度にカバンから出し入れしたり、常に背後を気にしながら歩くように用心し、幸い危険なことには遭遇せずにすみました。
それでも滞在中に、ボゴタで大学生がiPhoneを盗られそうになった時に抵抗したため撃たれたこと、犯人を追い詰めた警察官が撃たれて亡くなったことがニュースで流れていました。
都市の至る所に警察官や軍人がいて、バスの停留所や路上で若者を壁に手を当てさせて武器を持っていないか調べています。取り締まれないほどに手製の銃が氾濫していることを知りました。
また、かつては内乱での虐殺など暗い過去も持ち合わせていて、街を見ていると、どの建物も厳重に侵入や破壊防止の措置がされています。普通の住宅も普通ではないほど小売店などは店の中に入れないようにチェーンをかけています。路上から物を買うというシステムです。
ボゴタは南米ですが、標高が2500mととても高い高原に位置しているため、酸素が薄いと感じることが度々ありました。
友人はコカ茶が良いと勧めてくれて、日本にも持って行きなさいと言いましたが、コカ茶はコカインの原料なのでそれは絶対無理です。空港で犬に噛まれる自分を想像しました。
かなり説明したのですが理解し難いようで、彼女はせっかく勧めたのに私が断ったことにとても腹を立てていました。

街では枝についたコカの葉やコカキャンディーなどが売られていました。それは農村部においてコカが大規模に栽培されており、やはりコカインとなって輸出されていることを意味します。
ボゴタの街は、治安の悪さを象徴するような落書きは積極的にストリートアートで上書きし、警察力で犯罪を防ぎこみ、高層ビルを建て、インフラを整備し、近代化に力を入れてきた様子が伺えました。
それはとても成功しているようにも見えながらも、多様な人種のなかで、ある一部の人種の人々が特に貧しく、成長政策から置き去りになっていると感じました。


ある種のゆるやかで陽気な空気の中に、途方もない虚無が漂っています。そのうつろな眼差しは私の眼差しには決して重ならず、視線の先には何もないように見えます。何も見えていないのかもしれません。

めったに英語が通じなくてかなり焦りましたが、

 Soy fotógrafo japonés.
 ¿Puedo hacerte una foto?

?マークが前後につくのも不思議な面白さがありますが、カタコトのスペイン語で話しかけて多くのストリートポートレイトを撮りました。
できるだけ近づいて撮ることを意識して。
人々の顔がその街を物語っていると思います。


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